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ストレスチェック

ストレスチェックを健康経営に活かす~仕事の身体的負担が高い職場編~

集団分析で見えた課題にどう対応する?身体的負担が高い職場の対応策

ストレスチェックが義務化されて以来、多くの企業で従業員のメンタルヘルスの保持・増進が注目されてきました。
ストレスチェックの目的のひとつは「組織の集団分析を行い、その結果を職場環境改善に活かす」ことですが、実際に集団分析を十分に活用できていないケースも少なくありません。
しかし、本来ストレスチェックは、組織の課題を可視化し、課題に対して具体的な改善策を講じることで、従業員がいきいきと働ける環境を整えるための重要なツールです。
本記事では、ストレスチェックの集団分析結果のうち「身体的負担が高い」と判定された職場に対し、人事・労務担当者の皆様が取るべき具体的な対応策について詳しく解説しています。
従業員が心身ともに健康に働ける職場環境づくりに、本記事をぜひお役立てください。

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ストレスチェックにおける身体的負担の位置づけ

ストレスチェックは一般的に57項目の設問から成りますが、この設問は大きく分けると以下の3つの領域から成り立っています。

1.ストレスの原因と考えられる因子
2.ストレスによって起こる心身の反応
3.ストレス反応に影響を与える他の因子

「仕事の身体的負担」はこのうち「1.ストレスの原因と考えられる因子」のなかの1つの尺度とされています。
仕事の身体的負担に関する設問は、立ち仕事や不自然な姿勢での長時間作業、重量物運搬、長時間の運転や交代勤務等といった体への大きなストレスや疲労がかかる業務を想定して作られており、「からだを大変よく使う仕事だ」という設問が設定されています。

この設問に対し、
・そうだ……1点
・まあそうだ……2点
・ややちがう……3点
・ちがう……4点

上記の回答を決められた計算式(参考:厚生労働省ストレスチェックマニュアル)から算出し、身体的負担の程度を明らかにします。

仕事の身体的負担が高い傾向にある業態・職種


以下に、一般的に仕事による身体的負担が高い傾向にある業種・職種の例をご紹介します。もちろん、ここで挙げたもの以外にも身体的な負担が大きいケースは多く、実際の状況は職場ごとに大きく異なります。
もし読者の皆様の職場がこれらの業種に該当するようであれば、「身体的負担が高くなりやすい仕事環境である可能性がある」という視点をもって、ぜひこの後の内容をご覧ください。

業種 特徴
製造業 重い機械・資材の運搬や立ちっぱなしの作業、騒音・温度・危険物取扱いなど、身体へ負担がかかる業務が多い
医療・福祉 患者や利用者の介助、長時間の立ち仕事、不規則勤務が身体的な負担につながる
運輸業・郵便業 トラック等の長時間運転、積み下ろし作業により腰や肩など体への負荷が高くなり、夜間や早朝勤務などにより体内時計が乱れやすい
宿泊業・飲食サービス業 立ち仕事や重い調理器具・食材の持ち運び、長時間労働、シフト勤務などが、身体的負担につながりやすい
卸売業・小売業 商品の搬入・陳列・運搬などで頻繁に重い物を持ち上げたり、長時間立ち続けることが多いため、腰や脚への負担が高くなりやすい

仕事の身体的負担がメンタルヘルスに与える影響

仕事による身体的負担の高さは、肉体的な不調だけでなく、メンタルヘルスにも関連することが明らかになっています。
身体的負担が高い状態が続くと、腰痛、肩こり、頸部痛などの身体症状が慢性化します。これらの身体的症状は、集中力の低下、疲労の蓄積、睡眠の質の悪化を招き、結果として心理的ストレスの増大につながります。
そして欧米を中心に発展した「NIOSHの職業性ストレスモデル(以下の図を参照)」では、「仕事における要求度(身体的・精神的負荷)(※1)」が大きいほど、従業員に生じるストレス反応が強くなり、それが慢性的になると「メンタルヘルス疾患の発症」へ繋がるとされています。また、職場のストレス要因の1つである「交代勤務(※2)」も身体的な負担と関連し、メンタルヘルス不調の発症要因と成り得ます。

仕事の身体的負担と労働生産性との関連性

身体的負担による不調は、職場での生産性低下や労働災害リスクの増加など、組織運営上の課題も引き起こします。

厚生労働省主管の「慢性の痛み政策研究事業」の調査結果によれば、何らかの健康上の不調によりプレゼンティーズム(出勤してはいるが、体調が悪くて仕事の効率が下がっている状態)に該当する者の割合は33.6%であったとされ、その要因は、1位「頚部痛・ 肩こり」、2位「腰痛」、3位「精神の不調」、4 位「頭痛」という結果でした。このように仕事の身体的負担がもたらす各種症状が仕事の効率を低下させ、組織の労働生産性の低下につながるのです。

仕事の身体的負担に対する適切な考え方

これまで、仕事の身体的負担が各方面に与える影響についてお伝えしてきました。ここで重要なのは、身体的負担に対する適切な認識を持つことです。
確かに、建設業や介護職など、仕事の性質上身体的負担を避けられない職種が存在します。また、身体的負担を完全にゼロにすることが必ずしも理想的とは限りません。実際に、長時間の座り仕事による運動不足も健康を害する要因となることが知られています。
重要なのは、身体的負担が従業員に過度なストレス反応を引き起こさないよう、適切な管理と対策を講じることです。
それでは、身体的負担の高い職場環境において、人事労務担当者が実施すべき具体的な対策について詳しく見ていきましょう。

仕事の身体的負担が高い職場に対するアプローチ

人間工学的アプローチ

身体的負担の軽減には、「人間工学的な視点」が不可欠です。「人間工学」とは、人が仕事をする際に最も適切で疲れることの少ない筋肉の使い方を科学的に追及する学問領域であり、職場環境改善において重要な指針となります。
ここでは、「デスクワーク」「立ち作業」「重量物を取り扱う作業」に分け、それぞれのアプローチのポイントについて確認していきます。

デスクワークの場合

デスクワークは一見身体的負担が少ないように思われがちですが、実際にはパソコン作業中の不適切な姿勢によって、肩こりや腰痛などの身体的な不調を引き起こすリスクがあります。以下に、デスクワークのポイントについてお伝えします。

【デスクワークにおけるアプローチのポイント】
・モニターの高さを目線と同じかやや下に設定します。
・キーボードとマウスは肘が90度になる位置に配置します。
・椅子の高さは足裏全体が床につく高さに調整します。
・背もたれは腰椎の自然なカーブをサポートする形状を選択します。

立ち作業の場合

誤った姿勢や不適切な環境下での立ち作業により、肩こりや腰痛、慢性的な疲労などさまざまな身体的不調の原因になることがあります。立ち作業時は以下の視点を取り入れることで、身体への負担を軽減できます。

【立ち作業における人間工学的なアプローチのポイント】
■作業台の高さは「肘の高さ」に合わせる
立った姿勢で、腕を自然に下ろして肘を90度に曲げた位置が、最も身体に負担がかかりにくい作業台の高さです。この高さに調整することで、肩や腰、背中への負担が軽減されます。


■足元スペースと姿勢の自由度を確保
つま先や膝まわりに十分なスペースを設けること、ときおり体重を前後の足で分散できるようなスペースを、確保するようにしましょう。


■定期的な体勢変更・休憩
1時間に1回はストレッチや小休憩を挟み、同じ姿勢で作業し続けない工夫をすることが、過度な疲労や身体への負担を防ぎます。


重量物取り扱い作業の場合

重量物を取り扱う作業は、職場における腰痛や怪我の主な原因となり得ます。安全に作業を進めるためには、適切な姿勢や作業動作、環境の整備、機械の活用などによって身体への負担が軽減できます。以下に、重量物取り扱い作業を安全かつ効果的に行うためのポイントをご紹介します。

【重量物取り扱い作業における人間工学的なアプローチのポイント】
■正しい姿勢・動作の徹底
重量物を持ち上げたり運搬する際は、腰を曲げた不自然な姿勢を避け、なるべく体に近い位置で物を持つ、膝を曲げて持ち上げるなど、身体への負担が少ない持ち上げ方や運ぶ方法を徹底します。


■高さ・配置の最適化
荷物の積み下ろしや作業台の高さを適切に調整し、負担がかかりにくい姿勢で作業できるようにします。また、作業環境のレイアウト改善で無駄な移動を減らし、作業動線を最短化します。


■重量物の人力取り扱いの最小化
できる限り台車やリフト、クレーンなどの運搬補助具や機械を導入し、人力で持つ・運ぶ必要のある重量および作業回数を減らします。


■現場環境の整備とリスク評価
床の滑りや段差、照明、作業スペースの広さ、履物の状態など、バランスを崩す要因を排除し、転倒・過負荷のリスクを評価し、必要に応じて改善します。


※より詳細な内容については、厚生労働省の資料をご確認ください。

人事労務部門の役割

デスクやオフィスチェアを人間工学に基づいた設計のものへ見直すことで、腰痛や肩こり、全身の疲労感を軽減しやすくなり、無理のない姿勢を長時間維持することが可能になります。こうした備品の導入は、職場環境の改善を図るうえで、有力な選択肢の一つといえるでしょう。
また、人事労務担当者は、上記のような改善策を従業員に伝え、実践を促す役割も担っています。作業場へのポスター掲示や社内報、研修などを通じて、積極的に啓発活動を展開し、従業員の意識向上を後押しすることが求められます。
さらに、人事労務担当者に欠かせないもう一つの役割は、「現場の生の声に耳を傾ける」ことです。日々の業務に従事している従業員から直接話を聞くことで、作業環境に関する課題や改善のヒントを把握することができます。そうして得られた情報は、安全衛生委員会などの適切な場で共有・検討し、具体的な改善策の立案や実行につなげていくことが重要です。

物理的な作業環境に対するアプローチ

照度

物理的環境の改善も、身体的負担の軽減に寄与します。
作業場の照度は労働安全衛生規則第604条事務所衛生基準規則第10条で定められており、「精密な作業」は300ルクス以上、「普通の作業」は150ルクス以上と定められています。照度を適切に整えることで、見えづらいものを見ようとして無理な姿勢で作業するのを避けることができ、目の疲労軽減にもつながります。

温度・湿度

温度・湿度管理も従業員の身体的負担にかかわる重要な要素です。
事務所衛生基準規則第5条では、作業場の温度は18度以上28度以下、湿度については40%以上70%以下と定められています。

高温多湿の環境では熱中症のリスクが高まりますし、寒冷環境も、冷えによる血管収縮や体温低下、作業時の筋肉硬直が生じやすくなります。
さらに、温湿度は集中力や安全性にも影響します。暑さや寒さ、不快な湿度は作業効率の低下や事故発生の原因にも成り得るのです。

人事労務部門の役割

人事労務担当者は、職場環境が従業員にとって快適かつ安全であることを確保するために、定期的な職場巡視を通じて照度や温湿度の状況を確認する重要な役割を担います。これらの要素は、目の疲労や身体への負担、さらには生産性の低下や作業ミスの発生にもつながりかねないため、基準値を満たしているかどうかを継続的に把握し、必要に応じて適切な改善措置を講じることが求められます。

夜勤による身体的負担への配慮

夜勤勤務は、体内時計の乱れにより、疲労の蓄積や集中力の低下、高血圧や心疾患のリスク上昇、さらにはがんの発症リスクの増大といった、日勤とは異なる深刻な身体的・精神的負荷を従業員にもたらします。
とくに介護施設や医療機関など、24時間体制でのサービス提供が求められる職場では、交代制勤務が避けられず、多くの従業員が夜勤に従事しています。
こうした夜勤による健康への影響を軽減するためには、以下のような対策を講じることが重要です。

健康影響を軽減するための対策

■連続夜勤回数の制限
過度な疲労を防ぐため、連続して夜勤に入る回数に上限を設ける。


■十分な休息時間の確保
夜勤明けは十分な休養時間を設け、身体の回復を促進する。


■シフトのローテーションは「朝から夜へ」
日勤→準夜勤→夜勤のように、勤務時間が「朝から夜へ」と順番に進んでいく交替制勤務のシフトパターン勤務とすることで、体内時計への負担を軽減する。


■照明環境の最適化
作業中は適切な照度を確保し、休憩中には調光機能を活用して生体リズムへの影響を抑える。


人事労務部門の役割

夜勤従事者に対して、人事労務担当者には、以下のような組織的なサポートが求められます。

・健康に配慮したシフト編成基準の策定
・定期健康診断やストレスチェックの実施と、その結果に基づく就業上の配慮の決定
・夜勤従事者の健康意識を高めるための情報提供や、健康に課題を抱える従業員に対し、産業医との相談機会の創出

これらを通じて、夜勤従事者の健康保持・増進を支援し、持続可能な労働環境の構築を目指すことが重要です。

休憩時間の確保

身体的負担の軽減には、作業時間と休憩のバランスが重要であるのは言うまでもありません。連続作業時間の制限と適切な休憩の導入により、疲労の蓄積を防ぎ、従業員の健康を維持できます。
パソコンを使用する作業では、連続作業時間を1時間以内に制限して、10~15分の休憩を挟むことが推奨されています。この休憩時間には、遠くを見る、軽いストレッチをするなどにより目や身体の負担軽減を図ります。
立ち作業や重量物を取り扱う作業では、法律で定められた休憩時間以外にも、10分程度の短い休憩をこまめに挟むことが推奨されます。

柔軟な働き方の導入

可能な範囲で、柔軟な勤務体制を導入するのも有効です。
フレックスタイム制勤務間インターバル制度、時差出勤等により、休憩時間の確保や、個人の疲労度にあわせた勤務時間を調整することにつながります。
また、テレワークを活用することでも、通勤による身体的負担を軽減することができます。

まとめ

身体的負担とメンタルヘルスの関連性:

  • 身体的負担が高い状態は、メンタルヘルス関連疾患の発症要因のひとつとされる。

労働生産性への具体的影響:

  • 身体的負担による不調はプレゼンティーズム(出勤しているが効率が下がる状態)を引き起こし、労働災害リスク増加や労働生産性の低下など組織運営上の問題も発生させる。

身体的負担が高い業種・職種の特徴:

  • 製造業、医療・福祉、運輸業、飲食サービス業、小売業などで「重いものを持つ」「長時間同じ姿勢」「立ち仕事」「不規則勤務」が共通の負荷要因となっており、量的負担との相互関係も強い。

人間工学的アプローチによる環境改善:

  • デスクワークではモニターの高さやキーボード配置の最適化、立ち作業では作業台の高さ調整や定期的な体勢変更、重量物取り扱いでは正しい姿勢の徹底と運搬補助具の活用が有効である。

物理的作業環境の整備:

  • 適切な照度、温湿度管理により、身体的負担と疲労を軽減できる。

夜勤・交代勤務への配慮:

  • 連続夜勤回数の制限、十分な休息時間確保、シフトの適切なローテーションや照明環境最の適化などにより、体内リズムの乱れによる健康リスクを軽減する。

包括的な職場環境改善策:

  • 適切な休憩時間確保、フレックスタイムやテレワークなど柔軟な働き方の導入、従業員と管理職への定期的な教育研修により、組織全体で身体的負担軽減に取り組む。

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