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メンタルヘルス

職場のメンタルヘルスケアとして企業が行うべき5つの方法

メンタルヘルス対策/代表的な5つの方法と特徴・重要性を解説

企業における従業員のメンタルヘルス対策は、労働者の健康と生産性を維持し、職場の満足度を高めるために重要です。
以下に、代表的な5つの方法を、その特徴と重要性を踏まえて解説します。
おそらく多くの事業所では、これから新しい年度の健康計画を考える時期かと思います。
この機会に、今年度を振り返りつつ、次の一歩を踏み出すためのヒントとなりますので、ぜひご一読ください。

日本企業において行われている主な5つの方法

多くの企業は従業員の精神的健康をサポートするための何らかのプログラムを提供しています。これには、職場のストレス管理トレーニングやワークショップ、心理的健康教育などが含まれます。

メンタルヘルスプログラムの提供

職場で実施されるストレス管理トレーニングの代表的なものとして以下の5つが挙げられます。

1.マインドフルネス瞑想

内容:呼吸や身体の感覚に集中することで、現在の瞬間に意識を向ける練習。
効果:集中力の向上、ストレス応答の軽減、情緒の安定化。

2.タイムマネジメントトレーニング

内容:効率的なスケジューリング、優先順位付け、タスク管理の技術。
効果:仕事の切迫感の軽減、生産性の向上、時間に対するストレスの低減。

3.コミュニケーションスキル強化

内容:効果的なコミュニケーション方法、アサーティブ(自己主張)コミュニケーションの練習。アンガーコントロールの練習。
効果:職場の対人関係の改善、誤解や対立の軽減、自己表現の改善。

4.リラクセーションテクニック

内容:深呼吸法、筋弛緩法、自律訓練法など、身体的なリラクゼーション技術。
効果:緊張の緩和、睡眠の質の向上、全体的なリラクゼーション感の促進。

5.レジリエンス(回復力)トレーニング

内容:困難やストレスに対処し、回復するための精神的な強さを養うトレーニング。
効果:ストレスに対する耐性の向上、ポジティブな思考の促進、危機管理能力の強化。


これらのトレーニングは、セミナーや研修、eラーニングを利用した学習コンテンツとして提供されています。

職場環境の改善に、柔軟な勤務スケジュール

ワークライフバランスの改善とストレス軽減のため、柔軟な勤務時間やリモートワークのオプションを提供する企業が増えています。これにより従業員はプライベートや健康管理により時間を割くことができます。ここでは3つの施策をご紹介します。

施策1:フレックスタイム制の導入

目的:従業員が自身の生活リズムに合わせて出勤時間を調整できるようにする。


具体的な実施方法:コアタイム(例: 11:00〜15:00)を設定し、その時間帯以外は自由に出勤・退勤時間を設定できるようにします。


期待される効果:通勤のストレス軽減、個々の生活スタイルに合わせた働き方が可能になり、メンタルヘルスの向上が期待されます。

施策2:リモートワークの適宜活用

目的:通勤時間の削減と自宅での快適な環境での仕事を可能にし、働き方の柔軟性が高まります。


実施方法:リモートワークと、オフィス出勤を必要に応じてバランス良く組み込みます。


期待される効果:通勤による疲労感の軽減、自宅での働きやすい環境での生産性向上。社員自身が週に働く日数を選べる「選択的週休3日制」が、働く人々のワーク・ライフ・バランスを促進する施策として期待されています。

施策3:年次有給休暇の取得など休暇取得を奨励

目的:従業員が必要に応じて休暇を取りやすくし、ストレス管理とリカバリーを促進する。


実施方法:休暇の取得を奨励し、短期間の休暇取得も容易にする。また、メンタルヘルスのための特別休暇制度を設ける。厚生労働省が設置している、年次有給休暇取得促進特設サイトでは、年次有給休暇を取得しやすい環境を整備するために役立つ情報を紹介しています。


期待される効果:定期的なリフレッシュによるメンタルヘルスの保持、仕事への集中力とモチベーションの向上。


業態や業種、従業員のライフステージによって、従業員一人一人が自分に合う働き方は変化します。各従業員が、仕事もプライベートもどちらも充実させる働き方・生き方を選択できることは、メンタルヘルス対策になるだけでなく、ワークエンゲージメントの向上に必須です。

従業員支援プログラム(EAP)

EAPは従業員が職場や個人的な問題に対処するためのサポートを提供するプログラムです。これにはカウンセリングサービス、法的助言、経済的な問題に関するアドバイスなども含まれます
自社に最適な従業員支援プログラムのアウトソース先を選ぶために、選定の際のポイントを3つご説明します。

1.サービスの範囲と質

EAPプロバイダーが提供するサービスの種類と質を評価します。これには心理的支援、キャリアカウンセリング、法律・財務相談などが含まれます。また、プロバイダーが資格を持つ専門家(例:臨床心理士やカウンセラー)であるかどうかも重要です。

2.アクセシビリティと利便性

従業員が容易にアクセスでき、利用しやすいEAPを選ぶことが大切です。
これには24時間365日のサポート、オンラインでのカウンセリングオプション、アプリやウェブサイトを通じたサービスの利用のしやすさなどが含まれます。また、多様性への配慮として、多言語サポートがあるかどうかも重要です。

3.実績と評判

EAPプロバイダーの業界での実績と評判を確認し、そのプロバイダーの信頼性と効果性を判断します。さらに、プライバシー保護基準に適合しているかどうかも確認が必要です。

健康関連の福利厚生

例えば、フィットネスクラブの会員割引、社員食堂を利用した健康的な食事の提供、人間ドックの受診補助など、これらを福利厚生として提供している企業も多いと思います。身体的健康は精神的健康にも影響を与えるため、これらのイニシアティブは全体的なメンタルヘルス対策となります。

福利厚生プログラムの見直しについて

超高齢化社会では、従業員が年を取っても元気に働き続けるために、長期的な健康維持の視点が重要です。
これまでに提供されている福利厚生プログラムについて、従業員の年齢や体力に応じたプログラムとなっているか、さまざまな年齢層の従業員が継続的に利用できそうかなど、見直しが必要な時期と言えます。長期的な人材の活用に貢献するプログラムとなっているかについて検討してみましょう。

定期的なメンタルヘルスチェック

代表的なものが、ストレスチェックです。ストレスチェック以外にも、従業員のメンタルヘルス状態を定期的にチェックする様々なサーベイランスが活用されています。これらは、従業員のメンタルヘルス状態のモニタリング機能であると同時に、必要に応じて適宜サポートを提供するためのツールでもあります。

従業員のメンタルヘルス改善に

ストレスチェックサービス『STRESCOPE』は、法令対応のみならず、先進的なデータ分析とマンガや動画を活用したセルフケア機能により、仕事と生活の両面から従業員のメンタルヘルス改善に繋げることが可能です。

先進的な企業が取り組んでいるメンタルヘルス対策

ここまでは、一般的な5つの方法についてご紹介しました。以下では一歩進んで、海外の企業や国内でも先進的な企業が取り組みつつあるアプローチについても、簡単にご紹介します。

組織文化の改善

職場環境の改善とポジティブな組織文化の促進は、従業員のメンタルヘルスに重要です。これには、オープンなコミュニケーション、従業員の声に耳を傾ける文化、多様性と包摂の推進などが含まれます。メンタルヘルスに関するタブーを取り除き、オープンでサポート的な職場文化を促進するためにも大切です。

組織文化の改善の為には、職場環境改善に取り組むことが第一歩です。ストレスチェック集団分析結果を用いた職場環境改善についての記事も是非ご参照ください。

オフィス環境の改善

職場の物理的環境の改善は、メンタルヘルス対策と、ウェルビーイングの向上につながります。

例えば静かな休憩スペースの提供や、ミーティング環境の整備、緑や自然光の活用も、従業員のメンタルヘルスに良い影響を与え、ストレスを軽減する方法です。快適で心地よいオフィス環境は従業員のモチベーションを高め、ストレスを軽減します。

職場環境や健康に配慮した働き方を重視

オフィス環境は、物理的な要素、人間関係、業務量、自己裁量権の4つの側面から構成されていると言われており、これらが従業員のウェルビーイングに影響を与えることが指摘されています。

コロナウイルスのパンデミック以降、多くの企業がテレワークを導入し、従業員がどこで働くか、どのように働くかが多様化する中、オフィス環境についての概念も変化しているのです。

この変化により、従業員のウェルビーイングを中心に置いたオフィスデザインが重視されるようになっていること、また、若手世代を中心に、職場環境や健康に配慮した働き方を重視する傾向があり、先進的な企業はこれに対応しつつあります

むすび

企業における従業員のメンタルヘルス対策について、5つの主な方法をご紹介しました。

1) メンタルヘルスプログラム
2) 柔軟な勤務スケジュール
3) 従業員支援プログラム(EAP)
4) 健康関連の福利厚生
5) 定期的なメンタルヘルスチェック

これらのいずれの取り組みも、従業員のメンタルヘルスをサポートし、職場の生産性と従業員の満足度を向上させるのに役立ちます。それぞれの対策は単独で行われることもありますが、一般的には複合的に実施されることで、より効果的なメンタルヘルスサポートが可能になります。

また、日本ではまだ少数派ながら有効な方法についてもご紹介しました。産業構造や社会が大きく変化する中で、組織環境やオフィス環境の位置づけについても変化が求められています。

田中倫子(産業保健師)

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