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ストレスチェックから始める職場の活性化 / STRESCOPE
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ストレスチェック制度が施行されて以来、多くの企業で労働者のメンタルヘルスの状態が「見える化」されるようになりました。
ストレスチェック制度の目的は、個人のメンタルヘルス不調リスクを軽減することに加え、検査結果を集団的に分析して職場環境の改善につなげ、従業員がメンタル不調に陥る前に、未然に防止することにあります。
そこで、職場の環境について現状を的確に把握し、職場の意見、要望等を聞いて、計画的に職場の改善を進めることが重要です。
本記事では、ストレスチェックの結果をもとに「物理的な職場環境の改善が必要」と診断された企業の人事・労務担当者の皆さまに向けて、実践的な改善方法をご紹介します。
また、これから本格的に職場巡視を導入・実施しようと考えている企業のご担当者様にも役立つ内容となっています。
ぜひ参考にしていただき、いきいきとした職場環境づくりにお役立てください。
職場の物理的環境とは、従業員が働く場の「空間」や「設備」などの状態を指します。たとえば、オフィスや工場の「温度」「湿度」「照明」「空気の質」「騒音」「作業スペースの広さやレイアウト」「トイレや休憩室などの設備」などが含まれます。
従業員は生活時間の約3分の1を職場で過ごしていることから、職場は、いわば”従業員の生活の場”とも言えるでしょう。その”生活の場”が暑すぎたり、寒すぎたり、汚れていたり、不自然な姿勢等の身体に負担がかかるような場所である場合は、労働生産性の低下をもたらします。

ストレスチェックは一般的に57項目の設問から成りますが、この設問は大きく分けると以下の3つの領域から成り立っています。
1.ストレスの原因と考えられる因子
2.ストレスによって起こる心身の反応
3.ストレス反応に影響を与える他の因子
「職場の物理的環境」はこのうち「1.ストレスの原因と考えられる因子」のなかの1つの尺度とされています。
この因子を測定するために、ストレスチェックでは次の設問が用意されています。
私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない
この設問に対し、
・そうだ……1点
・まあそうだ……2点
・ややちがう……3点
・ちがう……4点
上記の回答を所定の計算式(参考:厚生労働省ストレスチェックマニュアル)から算出し、ストレスの程度を明らかにします。
職場の物理的環境と労働生産性の関連性には、様々な先行研究が存在します。
たとえば作業場の気温と知的生産性の関係性を調べた研究では、「室温が高い状態で作業量が低下した」という結果が明らかになっています(参考①)(参考②)。
また、照明の明るさと労働生産性について調査した研究、音と作業パフォーマンスに関する研究など、物理的環境が労働生産性に与える効果を検証した研究も数多く存在します。
このように、温熱・照明・音環境などの「物理的要因」が、生産性や従業員の心理状態に関わることが示されています。
職場環境には、温度・湿度・照明・騒音・作業スペースといった作業環境<ハード面>だけでなく、労働時間や安全衛生管理の水準、職場の人間関係、働きがいといった心理・社会的な要因<ソフト面>も含まれます。これらの両面がそろうことで、従業員は「快適さ」を実感することができます。
したがって企業には、「多くの人にとって快適であること」を前提としつつ、個々人の感じ方の違いに配慮する姿勢が求められます。その中でも、物理的環境の改善は比較的取り組みやすく、効果が早く現れやすい分野です。さらに、労働災害や身体的な健康障害の防止にも直結するため、企業にとって重要な施策といえるでしょう。
また、ハード面の改善は、結果としてソフト面の満足度にも波及します。たとえば、オフィスのレイアウトを見直した結果、従業員同士のコミュニケーションが活性化し、風通しの良い職場づくりにつながった例も報告されています。
このように、物理的な環境の改善は、従業員が心身ともに健康に働ける職場環境づくりの土台となります。
以下に、職場の物理的環境に関する課題の例をご紹介します。
・職場の温度・湿度が適切でない
・空調設備が不十分
・季節による温度・湿度の変化に対応できない
・照明が暗すぎる、または明るすぎる
・照明によって目の疲労がある
・自然光が不足している
・周囲の騒音が気になる
・電話や周囲の会話が集中を妨げる
・機械音や設備音によるストレス
・作業スペースが狭い
・プライバシーが確保されない
・動線が悪く移動が困難
上記は一例であり、実際の課題は業態や職種により異なります。改善策の検討には、客観的数値と現場従業員の声の両方を反映することが重要です。ここでは、これらの物理的環境に関する課題に対して、「職場巡視」と「快適職場指針」という2つの視点から、効果的な対応方法についてご紹介します。

常時使用する従業員が50人以上の事業所では、衛生管理者は週1回以上、産業医は月1回以上(一定の条件下では2カ月に1回)職場巡視を行うことが法令で義務づけられています。
職場巡視とは、事業所内を実際に見て回り、安全衛生上の問題やリスクを洗い出して改善措置を講じる活動で、物理的環境改善の起点となります。
「職場巡視で何を確認すべきか」について法令上の具体的な定めはありません。各事業所は業種や業態に応じ、事務所衛生基準規則や参考事例を踏まえ、作業環境の特徴に即した確認項目を設定する必要があります。
ここでは一般的なオフィスでの職場巡視において、物理的環境改善のために押さえておくべきポイントを、一例としてご紹介します。(参考)
・温度…18°以上28°以下
・湿度…40%~70%
・文字の識別が必要な事務作業の場合…300ルクス以上(※文字の認識が必要ない場合は150ルクス以上)
・照明に外れや汚れ、破損はないか
・光の反射による画面の見づらさはないか
・床の配線やコンセント、つまずきやすい箇所や滑りやすいところはないか
・棚の上に物が積み重なっていないか(物品は重いものを下に、軽い物を上に配置する)
・家具や重たいものは固定されているか
・1人あたりの作業スペースは十分か(1人あたり10㎥以上)
・通路幅は適切か(執務スペースの通路は80㎝、メイン公共スペースの通路は120cm以上を確保すること)
・休養室が常時利用できる状態にあるか
※常時雇用する従業員が50人以上、または常時女性30人以上を使用する場合は、休憩室を男女別にする(随時利用できる機能が確保されていれば専用の設備である必要はない)
※ 事業場の実状やニーズに応じて、休憩スペースの広さや設備内容について衛生委員会等で調査審議を行うことが必要
・ゴミの処理・分別は適切か
・ポットやレンジ・冷蔵庫は清潔に保たれているか
・トイレや給湯室に不衛生な箇所はないか、プライバシーは保たれているか
職場巡視で重要なのは、上記のような客観的な情報だけではありません。実際に現場で働く従業員の声や、ちょっとした要望にも耳を傾けることが重要です。
例えば、同じ温度に設定していても、場所によっては「寒すぎる」「暑すぎる」と感じるなど、体感温度に差が出ることは珍しくありません。
職場巡視は“現場感覚”を理解し、机上では見えない課題を拾い上げる機会にもなります。この機会を活かし、改善のヒントを現場から引き出すことが、快適で安全な職場づくりにつながります。
職場巡視後は日時、場所、担当者、指摘事項などを整理して報告書にまとめ、後日の衛生委員会などで共有します。衛生委員会の場を活用して、職場巡視の結果をもとに労使間で話し合うことでより良い職場環境づくりのために活かすことが求められるのです。
職場の物理的環境改善のために欠かせないもうひとつのポイントが、厚生労働省が定める「快適職場指針」です。職場巡視が「最低限、安全かどうかの基準が守られているかどうか」を確認するための制度だとすると、快適職場指針は「より快適な職場にするための方法」といえます。
労働安全衛生法に基づき、事業者には快適な職場環境の形成が求められており、そのための指針として「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針(快適職場指針)」が公表されています。この快適職場指針のめざすものは、「仕事による疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場づくり」であり、快適職場のための4つの柱が示されています。
快適職場の4本柱は①作業環境の管理、②作業方法の改善、③疲労回復支援施設の充実、④職場生活支援施設ですが、それぞれの具体的な内容は以下の通りです。
・空気の汚れ、臭気、温度、湿度、照度(明るさ)などを適切に維持管理し、不快を感じることなく働けるようにする。
・暑すぎる、寒すぎる、暗い、ホコリ、臭気等の環境を改善する。
・心身に過度な負担がかからないよう作業内容や方法を見直し、負荷の分散や作業手順の工夫などにより、負担を軽減する。
・特に力仕事や単調作業などは、身体的な負荷の状態に対する、定期的な確認と見直しが求められる。
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・清潔感のある休憩室や仮眠室、リラックススペースを設置し、ストレスや疲労を回復できるようにする。一時的に横になれるスペースを設けることも推奨されている。
・トイレ、洗面所、更衣室、シャワー室、食堂、給湯室などの生活施設を清潔かつ使いやすい状態で整備する。
快適職場指針では、これらの施策を継続的に取り組むこと、従業員の意見・要望を安全衛生委員会等を通じて反映することも重視されています。まずは現状把握のためのアンケートや巡視、モニタリングを行い、課題抽出と改善プランのPDCAサイクルを回すことが、環境改善への最初の一歩となります。

本記事でご説明した通り、職場の物理的環境改善のためには「職場巡視」と「快適職場指針」の2つの観点からアプローチすることが有効です。
一方で、具体的な進め方については業種や業態、オフィスのレイアウト等、それぞれの職場によって異なります。
最初のステップは、改善すべき課題の抽出です。職場巡視や快適職場指針を活用し、改善が必要な箇所を洗い出しましょう。
さらに、部署やエリアごとに課題を整理すると、より具体的な改善につながります。例えば、次のような視点で確認してみましょう。
・部署ごとの業務特性を踏まえた環境課題
・エリアごとの課題(執務スペース、休憩室、会議室などの共有スペース)
・特定の時間帯や季節に発生する課題
こうした観点で整理することで、改善策に優先順位をつけやすくなります。
課題を抽出した後に行うことは、対策の優先順位付けです。優先順位付けのときに大切なのは、仕事への影響と、対策の緊急度を考えることです。
例えば、抽出された課題を仕事への影響度と緊急度を踏まえて以下の通りに分類することで、対策の優先順位を検討しやすくなるでしょう。

従業員の生命や健康に直結します。例えば、夏季・冬季の極端な温度が例として挙げられます。熱中症・体調不良などに直結するリスクが高く、迅速な対応が必要です。
空調・照明設備のグレードアップ、オフィスレイアウト等の見直し、高品質チェアや電動昇降デスクの導入等が挙げられます。これらは従業員の快適性向上や疲労軽減に寄与し、長期的な健康維持・生産性アップに直結します。
通路に置かれた箱・床に伸びたケーブルやコード類は業務の主要機能に大きな影響は出ませんが、つまずきや転倒のリスクが高く、早急な対応が必要です。ほかにも突発的な異臭(例:生ごみ臭・トイレの臭気)についても、直接的な健康被害や業務停止には至りませんが、衛生・快適性を損なうため急ぎの対応が求められます。
具体例としては、コミュニケーションエリアの設置、室温や照明など、既存設備内での細やかな調整などが挙げられます。これらは改善すれば効果が期待できますが、影響度や緊急度が高い課題を優先した上で、計画的に取り組むことが望ましいでしょう。
職場環境改善において忘れていけないのは、「改善したら終わり」ではないということです。
例えば、
・従業員の体感や満足度をアンケートや生の声で確認する
・温湿度や照度などの測定データを再チェックする
・苦情や不便さが減ったか、業務効率に変化があったかを分析する
こうした客観的データと主観的な声を両方集めることで、本当に改善効果があったかを見極めることが求められます。
また、改善策を標準化し、マニュアルやガイドラインに反映して定着させる必要があります。改善の効果や事例を社内で共有することで、取り組みを一過性で終わらせず、継続的な取組みに発展させることがポイントです。
PDCAは一度きりではなく、回し続けることに意味があります。「改善→評価→再改善」の積み重ねが、快適な職場づくりを根付かせる鍵と言えるでしょう。
職場の物理的環境改善まとめ
物理的環境の重要性
ストレスチェックでの位置づけ
職場巡視による現状把握
快適職場指針の4本柱
計画的な改善アプローチ
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