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成果につなげるストレスチェック STRESCOPE
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2028年4月より、これまで努力義務とされていた従業員50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務付けられます。
小規模事業場では、産業医の選任義務や労働基準監督署への結果報告義務がないなど、50人以上の事業場とは一部異なる運用が想定されています。
本記事では、法改正の概要と施行スケジュール、義務化に向けて必要となる実施体制、社内規程、外部委託先の選び方など、今から準備しておきたいポイントを解説します。
【この記事でわかること】
・50人未満事業場のストレスチェック義務化の時期
・法改正が行われた背景
・50人以上事業場との運用上の違い
・義務化に向けた実施体制の整え方
・外部委託先を選ぶ際の確認事項
・高ストレス者への面接指導体制
・集団分析を職場環境改善に活かす方法
ポイント:50人未満事業場への義務化は、事業場の規模にかかわらず、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。
精神障害による労災認定件数は近年増加傾向にあり、小規模事業場でも発生しています。一方、50人未満事業場ではストレスチェックが努力義務にとどまっていたため、実施率は約60%であり、事業場規模によるメンタルヘルス対策の差が課題となっていました。 こうした状況を踏まえ、2025年5月14日に改正労働安全衛生法が公布され、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が拡大されることになりました。
ストレスチェック制度の目的は、精神疾患を発見、診断することではありません。従業員一人ひとりが自分のストレス状態に気づき、セルフケアや早めの相談につなげることによって、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」を目的としています。
また、ストレスチェックは個人の状態を確認して終わる制度ではありません。高ストレス者への医師による面接指導や、集団分析を活用した職場環境の改善まで含めて運用することが重要です。個人への支援と組織全体の改善を両輪で進めることが、制度の本来の目的といえます。

現時点で想定されるスケジュールは、次のとおりです。
・2025年5月14日:改正労働安全衛生法の公布
・2028年4月1日:50人未満事業場への義務化施行
・2029年3月31日まで:第1回ストレスチェックの実施完了
この施行日は、令和8年6月10日に公布された政令(令和8年政令第195号)により正式に決定しました。
義務化まで時間があるように見えても、実施体制の整備や外部委託先の選定、実施規程の作成、従業員への周知などには一定の期間が必要です。施行直前に準備を始めるのではなく、今のうちから自社に合った運用方法を検討しておくことが大切です。
ポイント:50人未満事業場では、産業医や安全衛生委員会の設置義務、労働基準監督署への報告義務などが50人以上の事業場と異なります。自社の従業員数を事業場単位で確認する必要があります。
50人未満の事業場では、産業医の選任義務や安全衛生委員会の設置義務がない場合が多いため、50人以上の事業場とは一部異なる運用が想定されています。
主な違いは次のとおりです。
| 比較項目 | 50人以上の事業場 | 50人未満の事業場 |
|---|---|---|
| ストレスチェック | 実施義務あり | 2028年4月1日に義務化 |
| 労働基準監督署への報告 | 年1回の報告義務あり | 報告義務なし |
| 安全衛生委員会 | 設置義務あり | 設置義務なし |
| 産業医の選任 | 専任義務あり | 専任義務なし |
| 実施体制 | 産業医等を含む社内体制が中心 | 外部サービスを含めた柔軟な体制を想定 |
| 集団分析 | 努力義務 | |
50人未満の事業場では、労働基準監督署に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を提出する必要はありません。ただし、これは報告義務の話であり、ストレスチェックの実施自体が不要というわけではない点に注意が必要です。現時点では努力義務にとどまっていますが、2028年4月1日以降は、事業場の規模にかかわらず実施義務の対象となります。
また、ストレスチェック制度は、原則として「事業場単位」で適用されます。事業場かどうかは、場所的なまとまりに加え、拠点の規模や組織上の独立性などを踏まえて判断されます。
たとえば、会社全体で100人でも、本社40人、支店30人、店舗30人がそれぞれ独立した事業場であれば、各拠点は50人未満として扱われます。一方、規模が小さく独立性が低い拠点は、上位の事業場と一括して扱われることがあります。
会社全体の人数だけでなく、各拠点が独立した事業場に該当するかも確認しましょう。

ポイント:義務化への対応は、制度導入の基盤づくり、実施体制・方法の整備、実施と事後措置の3段階に分けて進めます。
【フェーズ1】制度導入の基盤づくり
・事業者による実施方針の表明
・従業員からの意見聴取
・実施規程の作成と周知
【フェーズ2】実施体制・実施方法の整備
・実務担当者、実施者、実施事務従事者の確保
・外部委託先の選定
・面接指導体制の整備
・調査票と高ストレス者判定基準の決定
【フェーズ3】実施と事後措置
・調査票の配布、回収、受検勧奨
・結果通知と高ストレス者対応
・医師による面接指導
・集団分析と職場環境改善
・記録保存と運用改善
前編ではフェーズ1・2を解説し、フェーズ3は後編で取り上げます。
まず、事業者が制度の目的と運用方針を明確にし、従業員へ周知します。主な内容は次のとおりです。
目的は、ストレスへの気づきと職場環境改善による不調の未然防止であること
受検は本人の意思によるもので、強制できないこと
個人結果は、本人の同意なく上司や人事担当者に提供されないこと
高ストレス判定や面接指導の申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されていること
朝礼、社内メール、イントラネット、掲示板などを活用し、全従業員へ伝えます。特に、受検しなくても不利益を受けないこと、結果が同意なく共有されないことを明示すると、安心して受検できる環境づくりにつながります。
実施方法や体制を決める際は、従業員の意見を取り入れることが望まれます。50人未満事業場では安全衛生委員会の設置義務がないため、安全衛生推進者・衛生推進者、定例ミーティング、朝礼、社内アンケートなどを活用します。
意見聴取は導入時だけでなく、実施後の改善にも有効です。受検者の声や運用上の課題を把握し、次回の運用に反映しましょう。なお、10人未満の事業場では安全衛生推進者等の選任義務がないため、事業者が中心となって進めることが考えられます。
実施方法、役割分担、個人情報の取扱いを社内ルールとして定めます。厚生労働省のマニュアルに掲載されているモデル例を参考に、自社の実情に合わせて整備できます。
【実施規程に盛り込む主な内容】
・実施者、実施事務従事者、実務担当者等の役割
・実施時期と対象者
・調査票と高ストレス者の判定基準
・結果の通知、保存、管理方法
・面接指導の申出方法と実施の流れ
・不利益な取扱いの禁止
・個人情報・プライバシー保護の方針
作成後は、イントラネット、社内掲示、説明会などで対象者へ周知します。外部委託先が規程のひな形や運用マニュアルを提供している場合もあるため、支援範囲を確認しておくとよいでしょう。
事業場内に、制度全体の進行を調整する実務担当者を置きます。主な業務は、委託先との連絡、受検案内、スケジュール管理、面接指導申出時の調整などです。
10人以上50人未満では、安全衛生推進者または衛生推進者が担う方法があります。10人未満では、事業者自身が調整役を担うことも考えられます。
実務担当者と「実施者」は役割が異なります。実務担当者は進行管理を担い、個人のストレスチェック結果などの健康情報は扱いません。個人結果を確認できるのは、医師・保健師等の実施者と、その指示を受ける実施事務従事者です。外部委託する場合も、役割と情報の取扱範囲を明確にしましょう。
小規模事業場では、実施者の確保、個人情報管理、高ストレス者対応などを自社だけで行うことが難しい場合があります。委託先は費用や実施のしやすさだけでなく、実施後の活用まで見据えて選びます。
【確認したい5項目】
1. 実施体制:医師・保健師等の実施者が確保されているか
2. 実施方法:調査票、判定基準、結果通知方法が明確か
3. 情報管理:個人情報保護方針とセキュリティ対策が整備されているか
4. 面接指導:高ストレス者への案内、相談先、医師面接の体制があるか
5. 集団分析・職場環境改善:結果の可視化や改善支援があるか
特に、集団分析結果の読み取りや課題整理を支援するサービスは、自社だけで改善活動を進めにくい小規模事業場に有効です。既存の健康診断機関等を利用する場合も、費用だけでなく支援範囲を確認しましょう。
高ストレス者と判定された従業員から申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施します。面接では心身の状態や勤務状況を確認し、必要に応じて労働時間や業務負荷の調整などにつなげます。
50人未満事業場には産業医の選任義務がないため、あらかじめ依頼先を確認しておくことが重要です。依頼先としては、医療機関や産業医サービス事業者のほか、産業保健総合支援センターや地域産業保健センターを活用できる場合があります。依頼先が決まっていない場合は、早めに相談しておくと安心です。
一般的には、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」を使用します。仕事の負担、職場の支援、心身のストレス反応を幅広く把握でき、集団分析や職場環境改善にも活用しやすい点が特徴です。
回答負担を抑えたい場合は23項目の簡略版も選択できますが、取得できる情報が限られます。高ストレス者の判定は厚生労働省の基準に基づき、通常はシステムや委託先が行います。サービスごとに判定基準や結果の表示方法が異なる場合があるため、事前に確認しましょう。
ストレスチェックは、個人の状態を把握するだけでなく、集団分析により職場の課題を明らかにし、働きやすい環境づくりにつなげることが重要です。
小規模事業場では、業務の偏り、コミュニケーション不足、人員不足による負荷などが組織全体に影響しやすい傾向があります。「人数が少ないから不要」と考えず、結果を職場改善に活用する視点を持ちましょう。
集団分析では、個人を特定できない単位で、仕事の量・質、上司や同僚の支援、ストレス反応などの傾向を確認します。分析結果をもとに、業務分担の見直し、相談しやすい体制づくり、管理職への支援、コミュニケーション機会の確保など、具体的な改善策を検討します。結果を毎年比較することで、取り組みの効果や新たな課題も把握しやすくなります。

50人未満事業場へのストレスチェック義務化は、新たな法令対応であると同時に、自社のメンタルヘルス対策を見直す機会です。実施体制、役割分担、外部委託先、実施規程、面接指導の依頼先などを早めに整理しておきましょう。
制度の目的は、検査を実施すること自体ではなく、従業員の気づきを促し、高ストレス者への対応や集団分析を通じて職場環境を改善することにあります。後編では、具体的な実施手順、結果通知、高ストレス者対応、集団分析の活用方法を解説します。
この記事のポイント
・2028年4月1日に、50人未満事業場にも実施義務が拡大される
・50人未満事業場は労基署への結果報告が不要でも、実施義務は課される
・制度の目的はメンタルヘルス不調の未然防止と職場環境改善
・方針表明、意見聴取、実施規程、役割分担などの事前準備が重要
・外部委託先は、面接指導や集団分析、職場環境改善への支援も確認する
・実施後は、高ストレス者対応と集団分析を職場改善につなげる
【参考資料】
厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001646587.pdf
厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf
厚生労働省「令和6年度 過労死等の労災補償状況」(令和7年6月公表)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59039.html
厚生労働省「労働者数50人未満の小規模事業者の方」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70761.html
厚生労働省「第185回労働政策審議会安全衛生分科会(資料)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/newpage_00057.html
A1.雇用形態だけで対象外になるわけではありません。
パートや契約社員であっても、次の2つの要件を満たす場合は、ストレスチェックの対象となります。
1.期間の定めのない労働契約で雇用されていること
有期契約でも、契約期間が1年以上、更新により1年以上雇用される予定、またはすでに1年以上継続雇用されている場合は対象です。
2.週の所定労働時間が、通常の労働者の4分の3以上であること
なお、4分の3未満でも、契約期間の要件を満たし、所定労働時間がおおむね2分の1以上の場合は、実施が望ましいとされています。
A2.ストレスチェックの受検は従業員本人の意思によるため、会社が強制することはできません。事業者は対象者に受検の機会を提供し、受検しなかったことを理由に不利益な取扱いをしてはいけません。
A3.小規模事業場でも、集団分析を活用することで、業務負担や職場の支援状況などの課題を把握し、職場環境の改善につなげることができます。実施する際は、個人が特定されないよう人数や集計単位に配慮し、小規模な組織に適した分析方法を選びましょう。
A4.まずは、会社全体ではなく、支店・営業所・店舗など事業場ごとの従業員数を確認しましょう。50人以上か50人未満かによって、労働基準監督署への報告義務や産業医・安全衛生委員会の取扱いが異なるためです。そのうえで、各事業場に必要な実施体制や準備内容を整理しましょう。
メンタルヘルス不調の未然防止には、ストレスチェックと集団分析を活用し、職場環境の改善に継続的に取り組むことが重要です。
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